フジッボはよく磯辺の岩や波消しブロックなどにくっついています。
一見、貝のように見えますが、実は甲殻類(こうかくるい)です。
しかし、このフジツボの接着能力が歯科医療を変えるかもしれない
のです。
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甲殻類(こうかくるい)とは
甲殻類とは、節足動物の分類群の一つです。
エビ、カニ、シャコ、フナムシ、オキアミ、フジツボ、ミジンコなどを含む
グループです。
深海から海岸、河川、湿地まで、あらゆる水環境に分布するが、主に海で
多様化しています。
フジツボは厄介者なの
フジツボは厄介ものと、いわれ嫌われることが多いですね。
それは、どこにでもくっつくし、死んでも接着力はそのままで変わらないです。
船底やロープなどに付着しているフジツボを見たことがある人も多いと思いますが、
たとえば、船底にくっつくと船の速度が落ちてしまい、燃費が悪くなってしまいます。
また、火力発電所や原子力発電所においては、海水を冷却用などに用いていますが、
海水を取り入れるパイプにフジツボが付着すると、管が詰まったり、取水効率が悪く
なったりするのです。
困ってしまいますよね。
フジツボの接着力は非常に強力です
厄介者のフジツボですが、接着力はすごく強力です。
マイナス195℃まで冷やしても、350℃まで熱してもはがれることは
ありません。
フジツボの接着剤をわずか1平方センチに塗るだけで300kgの重さの
ものが貼り付けられます。
したがって、船底についたフジツボをはがそうとするなら、鋼鉄の基材も
一緒に削りとらなければならないほどの接着力です。
水の中でも強力な接着力
そして、私たちがふだん使っている接着剤は、空気中でしか使うことが
できません。
空気中で接着剤を使ってくっつけたガラスでも水中に入れると、徐々に
はがれていきます。
これは、水がガラスに接着する力の方が、接着剤よりも何倍も強いからなの
です。
もちろん水の中で直接ものをくっつけることはさらに困難になります。
しかしフジッボは、水中でいろいろな表面にしっかりと接着することが、
できます。
すごい接着力ですよね。
フジツボの接着力が歯科技工に使える
このようなフジツボの強力な接着力に注目したのが、アメリカ・アクロン大学
のロジャー・ケリー博士です。
博士は歯の充填物(じゅうてんぶつ)に恒久的に使用できる接着剤として、
フジツボの接着剤を合成することで、特に歯科技工のための役立てようと
考えたのです。
そして、アクロン大学の研究室は、接着剤を採取して、2種類のタンパク分泌液
に分離することに成功しました。
1つは乳白色の液体で殻の材料になるものです。
もう一つは粘りけのある薄茶色の液体で接着機能を持つものと考えられています。
しかし、近年になって、このたんぱく質は、2つではなく何種類ものたんぱく質
の複合体であることが明らかになったのです。
現在、それぞれのたんぱく成分についての解析が進んではいますが、その数は
なんと、20種類にものぼります。
すべて、もしくはその中の数種類のたんぱく質がフジツボの強力な接着能力に
重要な役割を果たしていると推測されています。
いつか、この接着剤が人工的に合成できるようになれば、歯の充填物だけでなく、
さまざまな場面で活用できると期待されています。
楽しみですね。
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